サイトトップ  はじめに  ホジスンの生涯  作品紹介  作品リスト  オンラインノベルと試訳  沈黙の家から  
ホジスン関連年表  Night Compass   Sigsand Manuscript  関連リンク   漂着の浜辺から   ・・・Seaside Junk Foods

 
 

著作

ー長編ー

<ボーダーランド三部作>
The Boats of the "Glen Carrig"
異次元を覗く家
The Ghost Pirates

ナイトランド

ー連作短編集ー

幽霊狩人カーナッキ
Captain Gault

ー短編集ー

Men of the Deep Waters
The Luck of the Strong


海ふかく
Out of the Storm

夜の声

ー短編作品ー

既約短編

The Voice in the Night
失われた子供たちの谷

陽動作戦
死の女神
石の船
From the Tideless Sea
The Derelict
熱帯の恐怖
海馬
水槽の恐怖
海藻の中に潜むもの
帰り船≪シャムラーケン号≫
ランシング号の乗組員

未訳短編

The Albatross
A Timely Escape
The Heathern's Revenge
The Captain of the Onion Boat

 


The Voice in the Night

(夜の声)

メニュー

書誌データと解説

補遺データ

マタンゴ

注釈

邦訳書誌データ

1. 闇の声 

「SFマガジン1961年9月増刊号」 収録
早川書房/ 刊
翻訳: 大門一男

2. 闇の海の声 

「アンソロジー恐怖と幻想 第二巻」 収録
初版: 昭和46年(1971年)3月1日
月刊ペン社/ 刊
翻訳: 各務三郎
ISBN: 0397-005020-1940
(画像右)

3. 闇の海の声 

「怪奇と幻想 第二巻」 収録
角川文庫
角川書店/ 刊
1975年
翻訳: 各務三郎

4. 夜の声 

「夜の声」 収録
創元推理文庫
東京創元社/ 刊
初版: 1985年8月30日
翻訳: 井辻朱美
ISBN: 488-53601-8

5. 闇の中の声 

「海ふかく」 収録
アーカムハウス叢書
国書刊行会/ 刊
初版: 昭和61年8月30日
翻訳: 小倉多加志

6. 夜の声 

「七つの恐怖物語-英米クラシックホラー」収録
偕成社/ 刊
1992年
坂崎麻子編訳

7. 闇の海の声 

「幻獣の遺産-憑依化現、幻獣小説集」収録
北宋社/ 刊
1994年
翻訳: 各務三郎

8. 闇の声 

「怪獣文学大全」収録
河出書房刊
1988年
翻訳: 大門一男訳

9. 闇の中の声 

「恐怖と怪奇名作集7-墓場から帰る」収録
岩崎書店刊
1999年
翻訳: 矢野浩三郎

英語圏書誌データ

1. Blue Book Magazine. 6(1), Nov, 1907

2. Nash's Magazine. No,10, Jan, 1910

3. Men of the Deep waters
Eveleigh Nash, 1914 収録

4. They Walk Again,
Faber & Faber, London, 1931
ed, Colin de la Mare

※「The Voice in the Night」はホジスンの短編の中でも最も有名な作品であり、アンソロジーや雑誌などへの採録回数も、把握しきれないほど多い。英語圏だけでも、おそらく50回を超えるのではないだろうか。従ってここに挙げたデータは、ホジスン再評価のきっかけとなったとされる、コリン・デ・ラ・メア編集のアンソロジー「They Walk Again」までである。これ以降、ホジスンの短編といえば「The Voice in the Night」という感じになった。
 Kane氏によると、この作品が最初に掲載されたのは上記のように「Blue Book Magazine」だが、これはイギリスではなく、アメリカの雑誌である。実はホジスンはこの雑誌に売り込む前に、ロンドンのGrand Magazineに売り込んだのだが、「当誌の読者には不気味すぎる」として、送り返されたという。

ストーリー

 静かな闇の夜、海で停泊しているスクーナー船に一艘のボートが近づいてきた。そのボートには、自分を老人と名乗る一人の男が乗っていて、食料を乞うのだが、けしてこちらに光を向けないでくれと言う。不審に思いながらも、食料を分けてやると、男は礼を言って、闇に消えていった。やがて時間が過ぎ、ボートがふたたびやってきた。そして、ボートの男は自らに起こった信じがたい物語を語り始めた・・・

解説

 「夜の声」(もっとも通りのよい邦題だと思うから、以降はこう呼ぶ)は、名実ともにホジスンの代表作である。日本で紹介されたホジスンの作品としては二番目だが、最初に紹介された「From the Tidless Sea」は明治期の抄訳で、しかも原作の名前もなかったから、一般にはこの作品がホジスン紹介の嚆矢とされている。
 「夜の声」といえば、日本では自動的に映画「マタンゴ」の原作と言われてしまう。実際のところ、映画は「夜の声」とはストーリー上では随分違っていて、原作というよりは原案というのが正当な判断だが、いずれにせよこの作品からインスパイアされたものであることは間違いなく、ホジスンの紹介を一気に推し進めたという点でも、重要な映画だった。ちなみに、この作品の翻訳紹介から二年後の1963年に映画「マタンゴ」が公開され、その翌年には「異次元を覗く家」の部分訳が「SFマガジン」に掲載された。この「マタンゴ」は、日本のみならず、海外でも評価を受けており、ホジスンの海洋怪奇作家としての評価を不動のものとすることに一役買ったのではないだろうかと思う。
 「マタンゴ」については、また別にページを設けることにして、話を「夜の声」に戻そう。
  「夜の声」という作品の完成度という点に関しては、いまさら言葉を尽くすまでもないだろう。ホジスンの代表作であることはもとより、あらゆる海洋怪奇小説の中でも郡を抜いた怖さである。キノコを食べることによって、菌糸に侵され、キノコ人間となってゆくという恐怖は、読む人々に原始的な恐怖を呼び起こすのではないだろうか。
 それでは、ホジスンはどうしてこうした作品を書き得たのか。
 実は、ホジスンがこうしたウィルス、あるいは細菌に侵されるとう話を書くのは、珍しいことではない。カーナッキ中でも、サイーイ現象などはそれに近い現象として紹介されていた。どうやらホジスンは、目に見えない病原菌の存在を、本気で怖がっていたようなのだ。したがって、キノコの胞子なんていうものも、きっと薄気味の悪い存在だと思っていたのではないか。
 これには理由も証拠もある。ホジスンの父親はガンで亡くなったのだが、当時はガンも、ウィルスのような病原菌によって発症するものだと考えられていた。従って、いくらホジスンが屈強な肉体を作り上げても、そうした病原菌には対処の仕様もないと考えたのだ。ホジスンのことを語る人々は、彼を「異常な潔癖症だった」と語っている。例えば手紙を読んだあとは必ず殺菌のために手を洗い、弟が外国に行く際にした忠告は、「便座に決して腰を下ろすな」だったりした。それは、「ごく身近な父を殺した病原菌が、いつ自分にも入り込むか分からない」という恐怖のせいだったのだろう。この作品が心底怖いのは、ホジスンがある程度本気だったからではないだろうか。

Copyright(C) shigeyuki. All rights reserved.