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・天路暦程

・変幻の地のディルヴィシュ
・ナイトランド─<冠毛>の一神話
・The Shut Room

・ブライトンの怪物
・夢十夜


Night Compass

注釈

 ホジスンが影響を受けた作品  

 『タイムマシン』 H.G..ウェルズ

 阿部知ニ/ 
 創元推理文庫 東京創元社/ 刊 ほか多数。

 ジュール・ヴェルヌと並んで、SF小説の祖のひとりウェルズ。ホジスン自身が熱心なウェルズのファンであり、また作家協会を通じて親交もあったから、その影響は確実にあると思われる。特に『異次元を覗く家』には、この作品の影響が顕著だ。

 

 『The Coming Race』 E.Bulwer=Lytton

 未訳作品だが、SF前史を語る際には必ずといっていいほど言及される作品。この作品は地下を舞台にした一種のユートピア作品だが、その舞台となった地下世界は『ナイトランド』の第二リダウトの存在する場所と一致する部分が多い。もしかしたら、意識的に似せているのかもしれないとさえ思える。ブルワ=リットンをホジスンが好んでいたことは間違いないため、この作品の影響は無視できない。

 

 『不思議な物語』 E.ブルワ=リットン

 中西敏一 / 
 世界幻想文学大系32 AB
 国書刊行会/ 刊

ホジスンの1898年5月3日の航海日誌に、「リットン卿の『不思議な物語』を読んだが、とても面白かった」という記述がある。船内に持ち込んで読んでいたようだ。

 

 

 『天路暦程』 ジョン・バンヤン

 池谷 敏雄/ 訳
 新教出版社 刊 ほか多数。

 世界で、「聖書に次いで読まれている本」とされる一冊。一人のキリスト教徒が、様々な困難を乗り越えて、神の国へ入ってゆくまでを書いた信仰の書。寓話と寓意で語られた、説法説話集のようでもある。ダンテの『神曲』にも通じるこの作品には、『ナイトランド』への影響を所々に感じる。

 
   
 ホジスンから影響を受けた作品  

 『変幻の地のディルヴィシュ』 ロジャー・ゼラズニイ

 黒丸尚/ 訳
 創元推理文庫SF / 東京創元社刊

 これは作者にとって随分と愛着のあるシリーズ作品であるようだ。あとがきによると、出版社が倒産したり、編集者が交代したりで、最初の三作が発表された後、ファンジンに一作載ったきりで、あとは長い中断の憂き目を見た(このシリーズは、「地獄に堕ちたものディルヴィシュ」という。まさに地獄に一度落ちたわけだ。ただし、こちらは僕は未読)。だが、リン・カーターらの尽力で復活し、それから長さや文体なども変えつつ、さまざまな雑誌に、都合十八年間にも渡って書き続けられてきたという。シリーズは短編が11作、長篇が1作。作者が鬼籍に入っている今、もうこれ以上はない。そしてこれはその長篇である。
 献辞の最後に、ホジスンの名前がある。それはこういう文面だ。
 「それから、ウィリアム・ホープ・ホジスンの影に。おつきあいくださったので。」
 ここまでストレートに、ホジスンに献辞を捧げているのは珍しいし、だからなんだか嬉しくなる。ファンの一人として、これだけで悪い点数を与えられなくなる。ちなみに、登場人物の六人の囚われの魔術師の一人(彼だけが白魔術師)が、「ホジスン」という。最後まで生き残る二人の魔術師の一人だ。「異次元を覗く家」とホジスンへの、オマージュといったところ。ちなみにもう一人の生き残りは「ダーコン」という。クトゥールー神話がらみで聞き覚えがあるような。そう、この作品はホジスンの影響を受けているクトゥールー神話の影響も色濃い。

 

 『ナイトランド─<冠毛>の一神話』 グレッグ・ベア

『SFの殿堂 遥かなる地平』 A 収録
酒井昭伸/ 訳
ハヤカワ文庫SF早川書房 / 刊

 ≪道≫シリーズや≪ブラッド・ミュージック≫の鬼才グレッグ・ベアが、ホジスンの≪ナイトランド≫をある程度化学的に解釈して、ひとつの短編とした作品。

 

 

 『The Shut Room』  H.S.Whitehead

 未訳作品。
  荒俣宏氏が「異次元を覗く家」のあとがきで、アメリカでホジスンを最初に発掘したのはこの作家だと思うと書いている。発表されたのは1930年4月の「ウィアード・テールズ」。

 
   
 参考作品  

 『ブライトンの怪物』 ジュラルド.カーシュ

 『壜の中の手記』収録 / 晶文社刊

 奇妙な作品を書くことで知られる、ジュラルド・カーシュの作品。これをここに持ってきたのは、小説の舞台がサセックスのブライトンであること、登場人物が田舎の牧師と、ホッジという船乗りであること、力自慢の人間が出てくること、また題材が海から来た、得体の知れない生物の正体をめぐるものということで、あまりにホジスンと符号が多いからだ(注1)。また、作者のカーシュはレスラーという仕事を経験しているという点も見逃せない。僕の勝手な思いこみである可能性がかなり高いことは認めるが、カーシュはどこかでホジスンの小説を読んでるんじゃないだろうか。そんなふうに思ったのだ。この先はネタバレになるのだが、その人魚の一種だと思った小柄な、体中刺青だらけの生き物は、実はサトーという日本人の柔術家で、この話の舞台は1700年代なのだが、広島の原爆の力で時間を超えて吹き飛ばされたのだという設定は(注2)、やはり小柄で柔道をやっていて、時間旅行の小説を書いていたホジスンをどうしても思い起こさせる。いささか原爆を甘く見てるようにも感じるのだが、反戦の意味も汲み取れなくもない。志は高いし、小説としても面白く、読んで損はしない

 

 『夢十夜』 夏目漱石

様々な本に収録されているし、最近では映画化さえされた漱石の幻想的な掌編集。

 
   
   
 参考資料  

『The Wandering Soul ── Glimpses of a Life』 William Hope Hodgson
compiled and Introduced by Jane Frank

 P.S.Publishing and Tartarus Press, 2005

 ホジスン研究の第一人者だったサム・モスコヴィッツが亡くなった後、残された多くの資料がebayにて競売にかけられた。それを入手したのが、この本の編者であるJane Frank氏である。この本はそれらの貴重な資料の一部をまとめたものであり、ホジスンのファンにはマストアイテムといえる一冊。ただし、150部限定であることから、既に多少のプレミアがついている。

 

『ファンタジーの歴史─空想世界』 リン・カーター

 中村融/ 訳
 東京創元社/ 

 ファンタジーを広く大人たちにも広めることに大きく貢献したペーパーバックの叢書「バランタイン・アダルト・ファンタジー」シリーズ。その監修を勤めたのが、自身作家でもあるこのリン・カーターである。この叢書は、荒俣宏氏などを通じて、日本では「妖精文庫」や「ハヤカワ文庫FT」などにも大きな影響を与えた。ちなみに、このシリーズにはホジスンの「グレン・キャリッグのボート」と「ナイトランド」が収められている。
 この本の中では、一章のタイトルとして「『ナイトランド』からナルニアへ」が掲げられており、イギリスにおける近代ファンタジーの出発点として『ナイトランド』が位置付けられている。
  以下は、同書からの引用。

「(略)第三長編『幽霊海賊』 でホジスンは海と底なしの深海に出没する想像を絶した恐怖へと立ち戻った。(略)コンラッドにも、さしものメルヴィルにも、ホジスンが『幽霊海賊』でなしとげたことはできなかっただろう。
 その想像力の広さにもかかわらず、ホジスンは本書であまり紙面を割かれることはなかっただろう、あの驚異的な傑作、『ナイトランド』がなかったとしたら。同書は1912年にロンドンの書店にならんだ。『ナイトランド』は、純然たる想像力がこれまで紙の上に築きあげたうちで、もっとも卓越した偉業のひとつにちがいない。(以下略)」

 

『文学と超自然恐怖』(定本ラヴクラフト全集7-1収録) H.P.ラヴクラフト

 国書刊行会/ 刊

 ホジスンを一早く評価した作家にこのラヴクラフトがある。したがって、ホジスンを評価するときに、ここで述べられているラヴクラフトによるホジスン評が引用されることが多い。ただし、評そのものは的確ではあるが、誰もが感じることの域に留まっている。

 

『夢の言葉・言葉の夢』 川又千秋

 ハヤカワ文庫JA 早川書房/ 刊

SF作家である川又千秋氏のデビュー作はこのエッセイだった。感傷的で自伝的なこのエッセイの中で、ホジスンの『異次元を覗く家』に一章を割いている。

 

『別世界にて―エッセー・物語・手紙』 C.S.ルイス

 中村妙子/訳 
 みずず書房/ 刊

 『ナルニア国物語』で有名なC.S.ルイスの自伝エッセイ。この中でルイスはホジスンの『ナイトランド』に触れている。

 

『フーディーニ!!』 ケネス・シルバーマン

 高井宏子/ 庄司宏子/ 大田原真澄/ 訳
 アスペクト/ 刊

フーディーニの伝記。この中でもホジスンのエピソードが大きく取り上げられている。

 

『空想文学千夜一夜: いつか魔法のとけるまで』 荒俣宏

 工作舎/ 刊

 

 

『幻想文学大辞典』 ジャック・サリヴァン編

 国書刊行会/ 刊

 

 
   
   
   
   
   
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