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アメコミ版「異次元を覗く家」について
ホジスンの「The House on The Borderland」(以下、「異次元を覗く家」)は、クラシックSFの一巨塔として、またラヴクラフトに繋がるコズミック・ホラーの原点のひとつとして、一応の括弧たる評価を持っている。こうしたコミックが出ていることが、その証拠となるだろう。この物語が今にいたるまで出版され、読み告がれている理由は、唯一つ、ホジスンの描きだした世界というのは、誰も真似の出来ないほどの、尋常ではない想像力と情熱で作り上げられているからだ。
さて、このコミックだが、一応は原作のストーリーを押さえながらも、活劇として楽しめる部分を増やした翻案となっている。導入部からして、暴力的だ(注1)。したがって、時間が暴走し、終末の光景の中を垣間見るというような、ある種叙情的ともいえる幻想的なシーンはほとんどカットされ、全面に押し出されているのは豚の化け物との死闘といった、怪奇的な要素だ。また、倒錯的な要素や、物語の多元化といった、迷宮的な味付けも付加されている。こうした描き方をすることで、結果として、この本は元の「異次元を覗く家」の核心とは、ほど遠い作品になっているように思う。僕がこの物語の「肝」だと思うのは、やはり世界の終末の光景を見るシーンだからだ。この幻視力は、ウェルズのヴィジョンを遥かに超えていると思う。そこをカットしてしまっては、意味がないだろう。 (注2)
ついでに言うなら、この絵も、僕のイメージとはかなり違う。もちろん、物語の解釈は人それぞれだし、絵の好みに関しては趣味の問題なので、何ともいえない。日本でも、ハヤカワから出た「異次元を覗く家」の表紙は二種類あるが(注3)、どちらも自分の好みとはいえなかったとはいえ、これよりはまだいくらか良かったようにも思った。こうした感想は、僕が日本人だからということもあるだろうが、それが全てでもないだろう。海外のコミックを読むといつも思うのは、日本の漫画がやはり質が高く、繊細だということ。全く別物だと思う。日本の漫画は、やはり独自の進化を遂げたのだろう。誰が描けばホジスンの世界を見事に表現できるか、それはすぐに思いつかないけれども、きっともっといいものが生み出せる人はいるに違いない。
ただ、ラストでどうも「ナイトランド」との結びつきを示唆するような場面があったのは、ややにやりとさせられた。このコミックでされている解釈とは違うにせよ、「異次元を覗く家」と「ナイトランド」は、確実に一つの時間軸にあるとは僕も思っているからだ。
(この本の情報はkaneさんより頂きました。ありがとうございました)
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書誌データ
「William Hope Hodgson's
The House on The Borderland」
翻案 / Simon Revelstroke & Richard Coben
作画 / Richard Corben
出版社 / DC Comics
出版年 / 2000年
注1) 原作では釣りのために訪れた場所で偶然廃墟を発見し、そこで手記も見つけたということになっているが、この本では、酒場でいざこざを起こして逃げ込んだ先が廃墟で、そこで手記を見つけたということになっている。それに、それに先行する監獄のシーンがあって、もっと現実か幻想かわからないような風になっている。
注2) ただし、さまざまな解釈があるというのは、いいことだと思う。それだけこの作品の、「懐が深い」とも言えるからだ。
注3) 1刷から6刷までは樽喜八氏、それ以降は加藤洋之&後藤啓介氏。
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